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「越境」が企業を変える―仙台市企業成長戦略セッション~Road to 100億~ 詳細レポート―

令和6年度支援先企業

事業拡大

2025.10.08

仙台市が実施する「地域中核企業輩出集中支援事業」は、今年度で2年目を迎えています。本事業は、地域中核企業としての成長を実現することを目的としており、今年度からは国による「100億宣言」が開始されたことも追い風となり、宣言企業やさらなる成長を目指す企業にとって、意欲的な取り組みの契機となっています。

その一環として、令和6年度に集中支援先として選定された5社の成長を後押しするため、「仙台市企業成長戦略セッション~Road to 100億」を開催しました。5社は2025年7月14日・15日の2日間にわたり東京に集まり、域外の先進企業や専門家とともに、成長戦略や組織課題について活発な議論を交わしました。本記事では、各社が語った成長ビジョンや経営課題を振り返りながら、地域企業が“100億企業”を目指す上での越境学習の取り組みをご紹介します。

初日の会場は、渋谷にあるSEVENRICH GROUP本社。同社は、経営支援と自社事業を両輪で展開し、設立から短期間で急成長を遂げている企業であり、スタートアップ支援や地方創生にも積極的に取り組んでいます。そうした成長企業の空気感や価値観に触れ、感謝の文化や挑戦の姿勢を肌で感じることで、参加企業に刺激を与えることを目的に、本会場での開催となりました。

セッションの冒頭では、集中支援先企業5社がそれぞれの100億宣言に基づいた取り組みや今後の成長戦略について発表していただきました。

①株式会社山一地所(代表取締役社長・渡部氏)

渡部社長は、組織の柔軟性と変化への対応力を高めるため、今年7月に管理職の大幅な異動を実施したことを紹介しました。この取り組みにより、各部門の視点が刷新され、社内に新たな気づきや対話が生まれていると語りました。また、マルチ人材の育成方針を掲げ、数年置きに部署をローテーションすることも検討されており、組織の強化を図っていくことを掲げています。

②データコム株式会社(取締役・小野寺氏)

小野寺取締役は、今後の成長に向けた具体的な施策として、新システムの構築・導入・リプレースを進めていることを説明しました。また、東京でスキルを磨いた専門人材の採用にも注力しており、地方企業であっても高度な人材を惹きつける魅力づくりが重要であると強調しました。

③ベストパーツ株式会社(代表取締役社長・室橋氏)

室橋社長は、同社が掲げる「50億円」という目標について、木村氏との対話を通じてその背景を語りました。確実に次のステージへと進むため、経営課題である営業力の強化に取り組む方針を示しました。

目標設定の現実性と、組織の成熟度に応じた戦略的な意思決定が印象的であり、着実な成長を目指す姿勢が伝わる発表となりました。

④今野印刷株式会社(代表取締役社長・橋浦氏)

橋浦社長は、印刷業にとどまらず、Web制作やデジタル領域との融合を進めていることを紹介しました。さらに、M&Aを積極的に活用し、関連業態の強化を図ることで、顧客に対して一貫したサービス提供を実現していくと語りました。

業界の変化に対応する柔軟な戦略と、垂直統合による競争力強化が、100億円企業への道を切り拓く鍵となることが示されました。

⑤WIDEFOOD株式会社(代表取締役社長・伊藤氏)

伊藤社長は、小売販売・飲食・通販という3つの事業柱をさらに強化し、100億円達成に向けた戦略として事業拡張や生産力強化等のアクションプランを提示しました。

また、企業の成長が地域社会にもたらす波及効果についても強調し、将来的には宮城県内で1万人以上の雇用を創出し、地域経済の活性化に大きく貢献したいとの考えを表明しました。

⑥SEVENRICH GROUP(木村氏)

SEVENRICH GROUP 地方創生戦略本部ゼネラルマネージャーの木村氏からは、企業の成長に必要な視点として「組織の熱量」「意思決定のスピード」「若手への裁量の与え方」などが挙げられ、参加企業の取り組みに対して力強いエールを送りました。単なる評価ではなく、実践に基づいた助言が多く、各社にとっては自社の戦略を見直す貴重な機会となりました。

若手メンバーとの対話と組織文化の共有

企業の成長を実現するためには、社長一人の力だけでなく、社員一人ひとりの成長が欠かせません。そうした考えのもと、後半のセッションでは、集中支援先企業5社に帯同したメンバーと、SEVENRICH GROUPの若手メンバーを交えたディスカッションが行われました。特に注目されたのは、同グループが奈良の老舗素麺屋「マル勝髙田商店」をM&Aした際のエピソードです。買収後、従業員との信頼関係を築きながら制度整備を進め、同じ熱量を共有する組織文化を構築していったプロセスが紹介されました。

また、新卒社員が新規事業部門を立ち上げた事例も披露され、若手に責任あるポジションを任せることで、当事者意識と成長意欲を引き出す組織風土が、事業の急成長を支えていることが語られました。

1日目の締めくくりには、社長以外のメンバーが登壇し、自社の企業風土や文化についてプレゼンテーションを行いました。会社が大切にしている価値観や、社員が誇りに思っている取り組みを自分たちの言葉で発信し、参加者同士で質問や意見を交わすことで、互いの理解と共感が深まる時間となりました。

2日目のセッションは、丸の内にあるデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社の本社にて、成長戦略における人材採用や組織づくりをテーマにしたトークセッションが行われました。

メインスピーカーには、スタートアップやベンチャー企業に特化した人材エージェントとして豊富な実績を持つ、株式会社キープレイヤーズの高野秀敏氏を迎え、参加企業が抱える採用・組織課題に対して、実践的なアドバイスが提供されました。

進行役は、ハンズオンによるバリューアップ支援やオーナー企業の課題解決に伴走している株式会社カナデルの小泉京子氏が務め、現場経験に基づいたファシリテーションにより、議論は深みのあるものとなりました。

企業の成長においては、人材採用と組織づくりの課題を的確に解決することが重要であるという認識が共有されました。セッションでは、「モンスター社員を放置してはいけない」といった組織の健全性に関する指摘や、「新卒採用とミドル層採用では、まったく異なる戦略が必要である」といった採用方針の違いに関する見解が示され、参加者にとって大きな気づきとなりました。

参加企業からは、組織や実際の採用現場で直面している課題や悩みが率直に共有され、高野社長はそれぞれに対して、事例を交えながら丁寧に回答されました。

セッションの終盤では、株式会社データコムの小野寺取締役から「参加企業5社による相互インターン制度」の提案がありました。企業間で人材を交流させることで、異なる組織文化や課題解決の視点を学び合い、成長の相乗効果を生み出すことを目的としたもので、参加者の間に新たな連携の可能性が広がりました。

2日間にわたるセッションは、参加企業にとって単なる情報交換の場にとどまらず、自社の成長戦略を再定義し、組織課題に真正面から向き合う“視座の転換”を促す貴重な機会となりました。リアルな取り組み事例や外部専門家の知見に触れることで、自社の課題や今後の戦略を改めて見直すきっかけとなったと期待されます。今後も継続的な連携を通じて、参加企業がそれぞれの目標を達成し、地域経済を牽引する存在へと成長していくことが期待されます。

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