
1920年に茶舗として創業した「お茶の井ヶ田株式会社」。お茶とお菓子の小売・卸売のほか、抹茶ソフトクリームを皮切りに、「喜久福」や「ずんだシェイク」をメインとした和スイーツの開発で新たな市場を開拓。さらに、飲食店を含む郊外型の店舗「喜久水庵」の経営など事業を拡大してきました。ターニングポイントは、仙台市太白区にオープンした食の複合施設「秋保ヴィレッジ アグリエの森」の開業。100億円企業への成長に向け、関東地方の出店強化、「道の駅しろいし(仮称)」での物販や産地直送販売、全国への広告展開による通販の促進を柱に事業を展開しています。
INDEX
「お茶の井ヶ田」は、私の曽祖父が仙台の中心部に埼玉県の茶舗「繁田園」ののれん分けとして開業したのが始まりです。1948年に株式会社井ヶ田茶舗に改組、1977年に「お茶の井ヶ田株式会社」を設立し、昔ながらのお茶の小売りや卸売りを続けてきました。その後、1993年に一番町の本店で抹茶ソフトクリームを売り出して好評を得ました。「お茶屋ならではの美味しいお菓子を」という思いが、商店街の名物を生みました。
その数年後、郊外に飲食店も合せ持つ「喜久水庵」の1号店を開業し、ロードサイド型店舗を増やしながら、抹茶クリームのどら焼き「どら茶ん」や生クリーム入り大福「喜久福」、「ずんだシェイク」など、和スイーツの開発に力を入れてきました。仙台駅やデパート、ショッピングセンターへの出店にも積極的で、現在は宮城県を中心にグループ全体で約50店舗を展開しています。また、2014年にオープンした物産館「秋保ヴィレッジ アグリエの森」も好調です。
弊社の目標は、2030年に売上高100億円達成することです。既存店の強化に加え、以下の3つの柱を成長戦略に据えています。
1.関東圏での出店強化
すでに関東に複数店舗を展開し、都内JR各駅で催事出店を頻繁に実施していますが、次なる目標はJR東京駅のお土産売場への常設店出店。首都圏でのブランド認知をさらに高めます。
2.「道の駅しろいし(仮称)」での新拠点開発
2027年に白石市で開業予定の「道の駅しろいし(仮称)」では、運営会社の構成員として物販と産直販売を担います。弊社にとって2つ目の物産館となるこの施設は、地元客だけでなく東北自動車道の新インターチェンジからの流入客も見込めます。「秋保ヴィレッジ」で培ったノウハウを活かし、白石市ならではの魅力を創出します。
3.全国広告展開による通販促進
現在、全国の地方紙に定期的に広告を出稿し、通販売上は順調に伸びています。今後は、増加する購入者・リピーターへのアフターフォローを強化し、効果的なDM戦略を展開していきます。


左は新宿駅構内、右は水戸駅構内での催事の様子。関東圏の方々に「お茶の井ヶ田」を知ってもらうのはもちろん、仙台銘菓としてアピールするよい機会に。
自社製造商品の約75%は菓子類が占めています。この分野にはまだ大きな成長余地があります。先ごろ、秋保ヴィレッジ内の敷地内に、「喜久福」の製造工場を新設しました。将来的には隣に焼き菓子工場も建設予定です。一方、従来からある大町工場では、ずんだシェイクのパウチタイプ製造を自動化し、大幅な増産体制を整えています。今後は国の補助金等も有効に活用しながら、思い切った設備投資を進めていきます。

売上がこのまま順調に推移し、自社開発商品の割合を増やして効率的な運営を実現できれば、売上100億円の目標は達成可能と見込んでいます。仙台市地域中核企業輩出集中支援事業に期待するのは、「収益が十分に残る100億円企業」への成長に向けて、一つひとつの課題を解決するための伴走支援です。
具体的にいえば、第一にはシステム化の本格的な見直しとデータの活用についてです。もちろん、店頭ではPOSレジの導入を、工場では製造機器のデジタル化をという具合に、それぞれの部署ごとでは常にシステムの更新に取り組んできました。しかし、全社的に一気通貫した仕組みとはなっていません。1年半かけてERP(統合基幹業務システム)を導入し、経営資源を一元管理すると同時に蓄積したデータを共有・分析し、経営に活かせる体制を構築していきます。
もう一つ期待するのは、新分野への挑戦に必要な知見です。例えば、アニメ『呪術廻戦』で登場人物が「喜久福」を紹介したことで、新たな若いお客さまにもこの和スイーツを知っていただくことができました。注文に応えて集荷量が一気に3倍近くまで伸びたのです。しかし、外注業務が多いため、出荷量に見合った利益が確保できていないのが現状です。こうした事態に対応するためのノウハウや、目の前の課題への客観的なアドバイスを求めています。確かな知見があれば、解決に向けて着実にステップアップできると考えています。

社内的には、「熟練の技を持つ人材」と「幹部候補となる人材」の確保が課題です。
前者については、見栄えや食感が重視される菓子づくりでは経験豊富な職人が不可欠ですが、担い手の確保が追い付いていない状況です。増設したラインによって生産量が増えているのもあり、井ヶ田のクオリティを維持するためにも早急な対応が課題です。
後者については、「仙台市中核人材養成プログラム」等のパッケージ事業を重層的に活用し、次代のリーダー育成を進めていきたいと考えています。さらに、先進企業での研修などを通じて、職場環境の改善や社員の意識改革を牽引できる人材を育てることも、重要な成長戦略と捉えています。
そして今後は、東京限定の商品開発や東南アジアへの輸出も積極的に実行していきたいと考えています。その一方で、曾祖父の時代から続く「仙台初売り」の文化も守っていきます。豪華景品が入った井ヶ田のお茶箱は「仙台初売り」の象徴であり、買い求める方の姿はお正月の風物詩です。お茶箱は防虫・防湿効果があり、保存容器として重宝されましたが、現在ではほとんど製造されていません。そのため、毎年「仙台初売り」のために特注しています。
伝統を守りながら、新しい挑戦を続けるためにも、弊社ならではの人材開発にも力を入れていきます。
私たちが目指すのは単なる100億企業でなく、地域課題の解決にも貢献しながら成長する企業です。その象徴が、2027年開業予定の「道の駅しろいし(仮称)」の契機となった、弊社初の物産館「秋保ヴィレッジ」です。
この施設は、農産物やお茶・お菓子の売り場とフードコートから成る複合施設です。私が入社した2007年当時、観光地に大型店舗をという構想のもと、すでに11,500坪の用地を取得済みでした。仙台市中心部からアクセスが良く、秋保温泉の行き帰りに立ち寄りやすい立地で誘客が期待できる場所です。開業プロジェクトを任された私は、地域課題と時間をかけて向き合い、この土地ならではの方向性を模索しました。
地域の最も大きな課題は、耕作放棄地の拡大でした。農家の高齢化と後継者不足に伴い、維持できていない農地や、空き家も目立ってきていました。イノシシなどの獣害という問題も。開業用地の周囲を眺めながら、ここを魅力的な場所に転換するには何をすべきかと考えました。その答えが、地元農産物の直売です。直売なら、少量生産や不揃いの野菜でも出荷できます。農家さんの手間は増えるものの、収益には確実につながります。また、利用者からしても、日常使いする食材も並んでいれば来店の頻度が上がりますし、施設としての集客も安定する。その読みは当たり、施設全体の年間売上は6億円から8億5,000万円に増加、出荷農家は60軒から250軒へ拡大しました。地域コミュニティも元気を取り戻し、新規就農者の出荷も増えてきています。地域の農家のみなさんがいきいきと農業を続けられる場を提供できたことが、何よりうれしく感じています。
また、この10年の間に秋保地区にはワイナリーやブルワリーなどの大型施設から、ジェラートショップやカフェといった個人のお店まで、新たに約50軒が開業しました。全国的に温泉地が低迷するなか、秋保温泉の客足は順調です。「秋保=うまくいくエリア」とのイメージが定着し、「秋保ヴィレッジ」という「点」から地域という「面」へと賑わいが広がっています。開業前に比べると交流人口が格段に増え、地域ブランドも大きく向上しました。
「秋保ヴィレッジ」はグループ内の他業態に比べて格段にステークホルダーが多いため、マネジメントが大変です。しかし、小規模農家の活性化を応援しながら相乗効果によって地域全体が盛り上がり、地区の景観を大きく変えることにつながりました。
これからも、自社の成長だけでなく、地域課題の解決に貢献し、地域中核企業として邁進します。そして、「お茶の井ヶ田」を全国区するために挑戦を続けます。


企業情報
お茶の井ヶ田株式会社
| 業種 | 製造業
卸売業・小売業
宿泊業・飲食サービス業
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|---|---|
| 住所 | 仙台市青葉区大町2丁目7番23号 |
| TEL | 022-224-1371 |
| HP |
キーワード: 製造業 卸売業・小売業 宿泊業・飲食サービス業 令和7年度支援先企業 事業拡大 地域貢献