
株式会社KMユナイテッド代表取締役社長・竹延幸雄氏は、大手鉄鋼メーカー、広告代理店を経て、2003年に義父が経営する株式会社竹延(建設塗装事業)へ後継者候補として入社しました。建設業界に馴染みのなかった竹延氏は、塗装職人の技術継承の難しさや、多忙による深刻な人手不足に強い課題意識を抱きました。
この危機感を受け、2013年に社内ベンチャーとしてKMユナイテッドを設立し、技術継承動画アプリ「技ログ」を開発。職人の知識の暗黙知をICT技術やテクノロジーに応用して生産性向上につなげ、職人育成事業は株式会社竹延へ移管しました。
その後、現場監督の多忙さと人材不足という課題に対応するため、建設業向けBPOサービス「建設アシスト」事業を立ち上げました。前職で経験したリストラクチャリングのノウハウを生かし、現場監督の業務を細分化し、現場監督のノンコア業務(※)をサテライトオフィスで支援する体制を構築。現在では、全国7拠点を展開し、他の建設業者からも受託する事業へと成長しています。
本記事では、多様な人材が活躍する「建設アシスト」事業について、竹延代表取締役社長および倉田CHOに伺いました。
※ノンコア業務:書類作成や報告書、集計関連の業務
コア業務:施工や品質に関する技術的知識を要する判断が必要な業務
―御社の具体的な事業についてお聞かせください。
竹延代表取締役社長/当社のメイン事業である「建設アシスト」事業は、現場監督の書類業務を遠隔で支援するBPOサービスです。現状、建設業の現場監督の業務のうち、55%以上がノンコア業務だと言われています。当社では、大手ゼネコン等からそうした業務を受託し、サテライトオフィスで「アシスト職」が対応しています。これにより、現場監督がより付加価値の高いコア業務に集中できる環境づくりを目指しています。
―ノンコア業務というと、初心者でもできる簡単な業務なのでしょうか。
竹延代表取締役社長/いいえ。ノンコア業務といっても単純作業ではなく、施工計画書の作成補助や現場案内図の作成、CADを用いた躯体図修正など、専門性を有するものを含め多岐にわたります。
一般的にBPOでは、簡単な業務を切り出すことが多いですが、当社では「どの工程を切り出すともっとも効果が出るのか」を顧客企業に提案しながら、一緒に整理します。特に、顧客にとって時間のかかる工程を切り出すことで、業務の標準化を進め、真に生産性向上に資するアウトソーシングが実現できるのです。
サービス導入企業の87%が残業時間の削減効果を感じており、生産性が1.79倍に向上したというデータもあります。
―ノンコア業務といっても、建設業への深い理解が必要になるのですね。採用が困難と言われる建設業で、人材を集めるのは大変ではないでしょうか。
竹延代表取締役社長/人手不足だとは思っていません。問題は人の活かし方です。当社では、女性や高齢者、外国人、非正規社員として就業していた人たちを正社員として積極的に採用しています。建設業に縁のなかった方でも、「やる気のある人」を採用し、入社後にしっかりと育成します。学歴や職歴、年齢等の属性ではなく、これまで努力してきた経験を高く評価します。その意味では、他の会社とは「採用したい人」の定義が異なるかもしれません。
倉田CHO/未経験や過去の挫折を理由に、自信を持てない方も少なくありません。面接では、「それをパワーに変えられますか?」と問いかけています。「○○だからできなかった」と自己分析できて、失敗を糧に成長しようとする人が、当社が「採用したい」と思える人材です。
竹延代表取締役社長/求職者数は年々増えており、2024年期には、100名の採用に対し1,868名もの応募がありました。
―未経験者は専門的な知識やスキルがないと思いますが、どのように育成されているのでしょうか。
竹延代表取締役社長/配属前に新入社員向けの技術研修を実施しています。業務内容は案件ごとに異なりますが、基盤となる専門的なスキルは一定程度共通化できますので、塗装職人育成向けに独自に開発した学習ツール「技ログ」をアップデートした「技ログ+(プラス)」などの動画コンテンツを研修に利用しています。
加えて、大手ゼネコン出身者など、超一流のスキルや経験を有するエキスパート人材6名を「レジェンド講師」として雇用し、日常的に業務相談やフィードバックを行う仕組みも取り入れています。
こうした仕組みによって、半年ほどで「未経験者」から脱し、チームの一員として業務に貢献できるまでに成長していきます。
私たちの人材育成の特徴は、レジェンドと呼ばれる圧倒的な技術や経験を有する人材に指導者になってもらうこと、そして業務工程の分解と標準化をしたうえで育成教材に落とし込むことです。これにより、経験の浅い人でも徐々に高いレベルの業務にチャレンジしてもらい着実にスキルをつけます。これは、当社でこれまで培ってきた職人育成事業と共通します。
加えて、人材育成には「厳しさ」も必要だと考えています。働きやすさだけを追求していてもES(従業員満足度)は上がりません。働きがいがあって初めて、スキルの定着や自身の成長を実感でき、ES、ひいてはCS(顧客満足度)の向上につながっていくと考えています。

―未経験者を徹底的に育成して一人前に育てるというプロセスには、塗装職人育成のノウハウが活かされているのですね。
竹延代表取締役社長/当社では、「人を育てることが事業そのもの」という創業時の理念のもと、人材育成やリスキリングを経営の中核に位置付けています。その時、「育成」と両輪になるのが「評価」です。顧客企業がどこを評価しているのかを分析・抽出し、人材育成や従業員評価と連動させています。この育成と評価の独自性こそが当社の経営戦略の中心にあると考えています。
また資格手当についても、当初は難易度の高い主要資格に限っていましたが、挑戦すること自体を応援してほしいという社員からの要望を受け、ファーストステップになる資格まで対象を拡充しました。それをモチベーションに、資格取得にチャレンジする社員も増えています。
倉田CHO/周囲にも、未経験からコツコツ努力を重ね、資格を取得している社員がいます。そうした姿を目の当たりにすることでよい刺激になっているようです。 定期的な面談を通じて、「一年後にどうなりたいか」を一緒に考えています。目標を共有しながら対話することで、モチベーションが向上していくケースも多くみられます。

―それだけ人材育成のための資格取得制度や評価制度が整っていると、キャリアパスのイメージもつきやすくなりますね。
倉田CHO/当社では、顧客ごとにジュニアリーダー、サテライトオフィスを束ねるトップリーダー、さらに拠点を横断してマネジメントを行う業務支援コンシェルジュという職階を設けています。コンシェルジュは全国で5名のみで、すべての顧客の状況を把握し、営業活動でも重要な役割を担っています。 組織規模がそれほど大きくなかった頃は、指名制でリーダーを決めていましたが、現在では挙手制としています。ジュニアリーダーは入社2年目から立候補でき、年に1度募集を行います。役員や役職者が3か月かけて面接を行い、評価結果は点数化したうえで順位をつけ、本人にフィードバックします。
竹延代表取締役社長/点数が上がった人にも下がった人にも、それぞれに課題はあります。その課題を、数値と文章で丁寧に説明し、本人にしっかりと認識してもらうようにしています。そのうえで次に挑戦できる人が、リーダーとして成長していけると考えています。
現在は、リーダー10人の募集に対して、立候補者が3倍集まります。リーダーの役割を通して、「自分は成長できる」「もっとやってみたい」と思える人が多くいることは、これまでの育成の積み重ねの結果だと受け止めています。

―「やる気のある人」を採用し、評価制度やキャリアパスが整備されているからこそ、どんな方でも活躍できるわけですね。
竹延代表取締役社長/はい。現在、当社の従業員の女性比率は6割ですが、リーダーの女性比率は7割に上ります。マネジメント層だからといって大変な働き方を求めるわけではありません。男性リーダーで育休を取得している社員もいますし、短時間勤務のリーダーもいます。マネジメントに向いている人がリーダーになる仕組みを構築しています。
倉田CHO/外国人材にももちろん門戸を開いています。当社の外国人従業員は、海外の大学で建築工学など学んだ、高い専門性を有する人材です。単に人手不足だから海外人材を雇用するのではなく、スキルを持つ人に活躍してもらうことを前提としています。彼らのスキルは十分に高く、そこに日本語力が加わることで、大きな戦力になります。そのため、日本語試験に合格した場合の資格手当などの制度も設けています。
竹延代表取締役社長/当社にとって、ダイバーシティはもはや当たり前のことで、重要なのは「ダイバーシティをどう活かして事業化しているか」という点です。社員のさまざまな経験や国籍等を活かして、当社は「スキルに生きること」を大切にしています。スキルを集めて、未経験者でもできるということを証明したい。
―多様な人たちが集まるからこそ、コミュニケーションが重要になってきますね。
竹延代表取締役社長/例えば、レジェンド講師であるベテラン技術者は、技術や経験の面では一流ですが、デジタルの分野では若い世代の方が得意な場合もあります。そうした場面では、互いに自分たちにないものを尊重し合い、学び合うことができています。そこが当社の良さだと感じています。
ベテラン技術者の方々は志が高く、よりよいものを目指す気概を持っています。若い従業員に教える際にも、動画を振り返りながら説明の仕方を見直すなど工夫を重ねています。そうした一流の技術者から直接教わる機会があるからこそ、若手社員も感銘を受け、成長意欲につながっているのだと思います。

―最後に、御社が目指す姿を教えてください。
竹延代表取締役社長/当社は、本当の意味での競争主義の会社だと考えています。あっという間に抜かれることもあれば、努力次第であっという間に挽回できる。研修・リスキリングの制度によって、このように成長し続けられる仕組みを構築してきました。この仕組みをオリジナルでつくることで、唯一無二のサービスを実現しています。この独自性こそが当社の強みであり、そのサイクルを回すことが経営戦略となっています。
現在は、建設現場のノンコア業務の効率化・標準化に主軸を置いていますが、コア業務が標準化されなければ、ノンコア業務も変わらないという課題意識を持っています。そこで、コア業務の分析も視野に入れ、大学の研究室とも連携しながら、アカデミックな視点で分析を進めているところです。
将来的には、製造業や研究開発分野との連携も視野に入れた「シェアードサクセス・ソリューション」の実現を目指しています。一企業による利益の独占ではなく、業界全体で成果を共有することで、ものづくりの持続的成長に貢献していきたいと考えています。

株式会社日吉 鈴木正 代表取締役社長・黄俊卿 海外企画室室長・大角浩子 総務部次長
その他の業種 事業拡大 人材 ダイバーシティ経営 職場環境の整備
2026.02.06
企業情報
株式会社KMユナイテッド
| 業種 | 不動産業・建設業
|
|---|---|
| 住所 | 大阪府大阪市北区天神橋6-3-16朝日生命天六ビル |
| TEL | 06-6940-7666 |
| HP |
キーワード: 不動産業・建設業 人材 ダイバーシティ経営 職場環境の整備
株式会社日吉 鈴木正 代表取締役社長・黄俊卿 海外企画室室長・大角浩子 総務部次長
その他の業種 事業拡大 人材 ダイバーシティ経営 職場環境の整備
2026.02.06